今日は、電話をとったら相手が外人だったというケースを見てみよう。
設定は事務所である。何も知らないあなたはいつもどおり受話器をとり、「○○トラベル、海外仕入部、△△でございます!」と元気よく答える。そして相手が定型化したビジネス電話会話のマナーにのっとり一通りの挨拶と儀礼をつくした後、話したい相手に電話をつないでもらえるよう要請してくるのを待つ。
ところがである。電話をかけてくる外国人は、たいていこの基本パターンを無視して、いきなり話したい相手の名前を言ってくる。それもけっこうぶっきらぼうに、名前だけを言ったりする。
Mr. Sato, please.
と、いった風にだ。日本の会社に電話して何やら言ってみてもほとんど理解してもらえない。この事実を彼らは経験則として身にしみて知っている。必要最低限の表現をとり、自分の目的を達成しようということか。
いずれにせよ、あなたにとってみれば外人が話したい相手の名前を言ってくるなんて想定してないわけだから、ほぼ間違いなく何も聞き取れない。電話をとったら何か変な音がした、こんな程度のはずだ。焦るのも無理はない。しかし、まずは落ち着こう。聞こえてくるのは日本語ではない、という事実に冷静に対応しよう。間違えても、ガチャーンときってしまってはいけない。(しかし、このようなケースはけっこうあると聞く。)
相手が言っていることが聞き取れない場合は、Pardon.とかI beg your pardon?とか言え、と学校でならった。確かにそれは正しい。だからここでそう言っても良い。しかしそれではあまりにもスマートさがない。相手の外人に最近の日本の会社は少し違うのだ、というところを見せたい。そこで、ここではこう言おう。
“Whom do you wish to speak to?”
「どなたと話されたいのですか」という訳だ。出だしのWhomはWhoでもかまわない。厳密にはWhomの方が正しいらしいが、なんとなくwhoの方が覚えやすいし、そもそもどちらも発音してしまえば大差はない。ところで、かけてきた外人は全然違うことを言っているかもしれない。案外自己紹介しているかもしれない。しかし、何であっても、Whom do you wish to speak to?とここで言って、後の会話に大きな影響が出ることはない。
さて、すると相手は、今度は(もしくは再び)Mr. Sato, please.などと話したい相手の名前を言ってくる。これが聞き取れなかったら(確かに外人の発音する日本語の名前はひどい。)今度こそ、Pardonである。そして「佐藤部長、外線にお電話でーす。」などとつないで差し上げればよい。
しかし、この作業だけでビジネスの基礎ができているとは言いがたい。電話を取次ぐときはかかってきた相手の名前をうかがって取次ぐのが基本だったはずだ。相手が外人であってもこのルールは適用になる。
Who are you? これでは失格。ぶっきらぼうな聞き方に相手はびっくりしてしまう。
May I have your name? なら、まあ許せる。
しかし、英語圏の会社などではたいていこう言っている。
“May I ask who is calling?”
この礼儀正しい質問に対し相手は自分の名前を名乗る。ところが悲しいかな、外人の名前は難しい。スミスやブラウンだけではない。だから、なかなか聞き取れない。しかしこれが聞き取れなくても、もうPardonはやめよう。この際どうでもいいから、早く目的の人につないであげるべきである。そして保留ボタンを押す前に、
“Thank you. Hold the line, please.”
などと言い作業が終わる。
“Thank you for calling ABC Travel.”
と言って電話を切ると、なかなか会話が締まってよいかもしれない。
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